UTMB2019エピソード③
タイムよりも完走重視なランナーのUTMB2019冒険記です。
UTMB 2019レース中で印象に残ったエピソードの紹介。今回は後半、極度の疲労と猛烈な睡魔で追い詰められたU13エイドのシャンペ湖(Champex Lac)までの道のり。多くのランナーと同じく苦しんだが、近くにいた日本人ランナーのおかげで、シャンペ湖までたどり着き復活できた。この時の感謝の気持ちを残したくて、このエピソードを取り上げました。
1.シャンペ湖の場所
シャンペ湖(Champex Lac)は123キロ地点にあるU13エイド(地図⑦)。中間地点78キロのクールマイヨール(地図①)でドロップバッグを受取りリフレッシュした後、後半の山場となるイタリアとスイスの国境のフェレ峠(Col Fertet)(地図⑤)を超え、日本じゃ経験できないの長~~い下り坂(距離約20キロ、標高差約1500m)の先にある。
2回目の夜に通過するシャンペ湖以降は、多くの市民ランナーを苦しめる。
2.クールマイヨール~フィレ峠~シャンペラックまで
(1)クールマイヨール~アルヌバズ
U8エイドのクールマイヨール(地図①)を過ぎ、ベルトーネ(Bertone)(地図②)~アルヌバズ(Arnuva)(地図④)まで山肌に沿った快適なトレイルが続く。景色が開けて気持ちはいいが日陰がなく、昼間に通過するのはツライ。小刻みなアップダウンがある上に、シングルトラックでランナを抜かしにくく、意外に時間が稼げない区間。
(2)アルヌバズ~ラ・フリー
U11エイドのアルヌバズ(地図④)を出ると、イタリアとスイスの国境フェレ峠(地図⑤)まで約800mの登り、坂勾配もきつい。リザルトでは約2時間登りっぱなし。フェレ峠着が19時。ここを超えると、デ・フォルトまでの長い長い下り。次第に日も暮れて、ランナーもまばらで心細い。ようやく下り坂を終え集落を抜けると、シャンペ湖までの登りが始まる。
写真はフェレ峠への登り口(山が人の顔に見えたので撮っていた)
3.救われた出来事
集落を過ぎてシャンペ湖までの登りは距離で約3キロ、登りが約500m。くねくねと曲がる似たような山道が続く。2回目の夜の23時頃、極度の疲労と猛烈な睡魔で、精神的に一番辛い時間帯。とうとうマイナス思考の無限ループに陥って、悪魔のささやきを受け入れていた。
- UTMBで120キロもこれたなら立派だよ。
- シャンペ湖の後がまたハード。山中で動けなくなるより、潔くやめるべきだ。
うん、そうだそうだ、と気持ちはリタイヤへ傾き、とぼとぼ歩いていた。
ふと気づくと男性の日本人ランナーがいたので、眠気覚ましをかねて話しかけた。そして、シャンペ湖でリタイヤしようと思っていると弱音を吐いた。
すると、その方から思いもよらず励まされる。まだ十分に完走できる時間があるので、頑張りましょう っと。そして、次の言葉を繰り返し投げかけてくれた。
- ここまで来たら、絶対完走する強い意志です。
- たんたんと一歩一歩進むだけです。
このひと言を聞いて、悪魔がす~っと消え去り、気持ちが前向きになった。まずはシャンペへ行き、一息ついてからどうするか考えようと。
一番辛い時に、たまたま近くにいた日本人のトレイルランナーがいて、そして見知らぬ方から励ましてもらえた幸運。この出来事がなければきっとシャンペラックまでたどり着いていなかっただろう。おかげで完走できました。感謝しています。
写真はシャンペ湖エイドの入口ゲート(0:35) 意識朦朧 あごも上がっている>。<
U13エイドのシャンペ湖で、仮眠テントで横になって20分爆睡。その後、体調も回復しレースを継続できた。
4.シャンペ湖について(参考)
意識朦朧で印象が薄いこの区間。当時の記憶を頼りに、ちょっとネットで調べてみた。
(1)どんな山道だったのか?
周辺の地図:https://mapcarta.com/es/Mapa
Issertの集落を過ぎると山道に入り、山道は小刻みにくねくねしていた記憶がある。大会公式地図とリンク地図を参照すると、概ねこんな感じでしょう。
(2)U13 エイドのテントは何だったの?
地図リンクを開くと「Fort d'artillerie de Champex-Lac」という名の建物(博物館)がある。エイドのテントは、その横の空き地に設営されているようだ。
写真右手前テントが仮眠テント。到着ゲートでランナーが到着する度にマイクで叫んでお出迎えするので、か~なりウルサイ。でも睡魔が勝っておやすみ3秒。
(3)シャンペ湖のサイズ
地図(上の図参照)で改めて確認すると、意外と小さい。全周2キロぐらいかな?
5.まとめ
- シャンペ湖までの登り、なかなかエイドにたどり着かず、心が折れます。要注意です。
- レース中に見知らぬランナー同士で話すって、トレランならではですよね。トレイルランニングのそんな魅力がとても気に入っています!
6.追記
本文から割愛したのですが、国境のフェレ峠ではこんなトラブルもありました。
フェレ峠の山頂直前で雹(ひょう)が激しく降りだし、山頂到着早々にテントに避難。雨と雷が激しくなり、すし詰めのテント内で約30分、心細く怖い時間を過ごす。フェレ峠からの長い下り、山頂での出来事に加えて時間ロスのショックから関門に間に合わないと、完全に戦意を喪失していた。
U12エイドのラ・フリー(地図⑥)に21:14着。思考が混乱して関門時間を1時間読み違えてしまい、関門まで20分しかないと勘違いし、休憩も取らず慌ててエイドを出発(滞在7分)。その後、後続から追いついてくるランナーが最終ランナーを拾うスイーパーに思え怯えていた。
こんな弱った状態で、シャンペ湖への辛い登りが追い打ちをかけ、マイナス思考のループに陥ってしまった。
UTMB2019冒険記の目次
https://www.kenkensblog.info/entry/2020/05/01/000000
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