今回紹介したいのは、登山の運動生理学の本、タイトル:登山の運動生理学とトレーニング学。平易な文章で書かれていて、図表や写真も豊富で、分かり易い。身体の仕組みに疎いボクでも、興味深い内容が多い。トレイルランナー鏑木毅氏が著者の所へ通ったのもうなずけます。ひょっこり喜美乃さんを探すのも楽しい。。
1. 本の基本情報
- タイトル:登山の運動生理学とトレーニング学
- 著者 :山本正嘉/鹿屋体育大学教授
- 発行年 :初版2016年
- ページ数:713ページ
目次は以下の内容で、著者の30年以上にわたる研究の歩みが、ギューっとまとめられた内容です。特に第6章にトレランについての考察があり、ここにとても惹かれたので、衝動買いしちゃいました。
第1章.登山と健康
第2章.登山界の現状と課題
第3章.登山の疲労とその対策
第4章.登山のための体力トレーニング
第5章.海外での高所登山・トレッキング
第6章.登山における人間の可能性と限界
第6.1章 ウルトラマラソン
第6.2章 トレイルランニング
第6.3章 トランスジャパンアルプスレース
2. 著者の鹿屋体育大学教授/山本正嘉氏とトレラン選手
トレイルランナー鏑木毅さんのUTMB2019に向けたNEVNERプロジェクト、その動画の中で、体力測定をしていたシーンをご存じの方もいると思います。2009年UTMB3位入賞した時と、現時点の身体的な違いを科学的に把握し、改善していこうとする姿勢が印象的でした。その時の測定場所が鹿屋体育大学で、測定を担当された方が、本書の著者である山本教授です。
測定が鹿屋体育大学だったことは覚えていたけども、教授の名前までは記憶になかった。その動画の中で、的確に分析説明をされるシーンは印象に残っていたので、その方の著書に出合えたことは、個人的に嬉しい。
また、鹿屋体育大学といえば、トレイルランナーの宮崎喜美乃さんが頭に浮かんだのも、本書をチョイスした理由。
宮崎喜美乃さんが鹿屋大卒ってことが記憶にあった。母校でもあり、ご本人が提供された写真が、ところどころに本書に挿入されているところから、山本教授の研究室に在籍してたのでしょう(未確認)。宮崎喜美乃さんが写っている写真を発見するのも、楽しみな本です(笑
以下、この本のおすすめポイントなど書いてみたので、興味あれば読んでみてください。
3. おススメの理由
大学教授が書かれた教科書的な著書、との印象になりそうですが、この本はちょっと違う。理由は以下のように、平易な説明で、理論と実践とが上手く体系づけられていることに加えて、ふんだんに図表が挿入されているので、素人にもイメージがし易い構成になっています。
①一つ目、説明が平易。科学的な内容だと、どうしても専門用語に圧倒されて、読む意欲がそがれがち。だけれども、本書は比較的平易な表現が多様されているので、とても読みやすい。
例えば、タイトルにある「運動生理学」についてwikipedeiaでチェックしてみると、”健康専門職の1つであり、運動に対する急性的および慢性的な応答の研究領域。”と書かれていて、敷居が高く感じてしまう。運動生理学 - Wikipedia
このの点について、本書では、”運動時や生活時の身体の仕組みを知ることが「運動生理学」。その知識を活かし、自身の身体に積極的に働きかけ、よりよい方向に変えていくことが「トレーニング学」”とあり、頭が拒否反応を示すことなく、読み進めることができる。
②二つ目は、グラフ、図表、グラフ、写真が多い。本を見開くと、ほぼ何かしらの写真、図表などが挿入されている。それらには文章よりも多くの情報が詰まっていて、興味深い。
③三つ目は、調査対象者が幅広い。健康な登山者だけでなく、高齢者、子供、男女差、肥満者などの傾向やデータも取り扱かわれている。レースだと、上位者・下位者・リタイヤ者などを比較されている。これらのデータにより、色々な視点でとらえるることが出来きて面白い。
④四つ目は、巻末に索引が付いて便利。本書のような辞書代わりに使う本は、索引があるととても便利。個人的はとても嬉しい配慮です。
⑤そして最後の五つ目は、各章に盛り込まれているコラムの内容が秀逸。各章の中に1-2ページの短いコラムが挿入されているのですが、その内容が、興味をそそられるものが多い。以下のようなタイトルのコラムが、約125個もあり、ここだけ読んでも、十分に楽しめます。ブログに使えそうなネタが、詰まっている♪
・酒は理想的な飲み物?
・ザックが10kg重くなったときの負担増加は?
・食べるといくらでも運動できる
・ハードな登山はいつまでできるのか
・サポートタイツの効果
・ウルトラランナーと健康・不健康
・胃腸疲労の原因と対策
・長距離走選手のトレーニングの組み立て方
4. トレランの考察について
6章にあるトレイルランニングの考察について、ちょっとだけ触れます。
6.1章、ウルトラマラソンについての考察。トレランは、上り下り、ザックの重さ、不整地面、環境条件などの影響する要因が複雑。ロード走ではこれらの影響が小さくなるので、耐久性の問題をよりシンプルに考えることができるため、ロード走による考察がなされています。
上位者・下位者・リタイア者による、普段のトレーニング内容や経験値・行動パターンなどのデータ比較はとても有意義。月間走行距離の差が、結果の差として顕著に出ているのだが、どの程度違うのか、そのデータなどは興味深い。
6.2章、トレイルランニングの考察。ここでは、日本山岳耐久レース(通称:ハセツネ)での調査データが紹介されています。2004年と少々古いのが残念ではあるけれども、トレーニングの状況、疲れを感じる地点、疲労箇所、補給エネルギーなどの情報は、十分参考になるでしょう。
6.3章、トランスジャパンアルプスレースの考察。ご存じ、日本海から太平洋まで北・中央・南アルプスを8日間以内に踏破する、略称TJAR。このレースを目指してはいないけども、記載されているデータ、例えば、上位者とのハセツネタイム比較、トレイルでの練習時間比較、などはとても興味深いですね~。
5. まとめ
本書は、登山の運動生理学をちょっと知りたい時に、活用できる内容だと思います。引用文献・参考文献も巻末に記載されているので、気になったテーマをもっと深く知りたい時には、そこから発展していけそう。本書はいろいろ活用できそうです。
追記:トレーニングに関して触れていなかったので追加(2022.07.17)
本書では、筋力トレーニングの重要性を以下のように解説している。そして自体重を負荷した筋力トレーニングを写真付きで掲載してある。
- 登山には筋力も持久力も重要だが、優先度としては筋力の方が高い
- 登山を励行するだけでは十分な筋力強化はできない
- スクワット運動、腹筋、脚上げ運動の3つは、全て登山者に必須
NEVERプロジェクトの公式ブログ↓↓↓
Analysis鹿屋体育大学 山本正嘉教授との再会 – NEVER #まだ終われない – トレイルランナー鏑木毅 UTMB® チャンレジプロジェクト
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では、また。
UTMB2019冒険記の目次
UTMBを目指す市民ランナーの為に、レースの様子、シャモニへの行き方、宿泊、必要費用などについて、2019年参戦したことを書いています。興味あれば覗いてみて下さい♪