特定のスポーツで特定の国の選手が強いのはなぜか?
運動能力に影響を与える「スポーツ遺伝子」なるものが存在するのか?
こんな疑問に対し、科学的に追る本。
アスリートが継承している遺伝子について、何が解明されて、何が議論されているのか、そんな内容を垣間見ることができる一冊です。
- 書名:スポーツ遺伝子は勝者を決めるか? アスリートの科学
- 著者:デイヴィッド・エプスタイン
- 発行:2016年
著者はアメリカのジャーナリスト。
この著者を知ったのは、YouTubeで見たTEDトークのプレゼン動画、タイトル「アスリート達は本当により速く、強くなっているのだろうか?」。
2014年に公開され、現時点で視聴回数が670万回。ご存じの方も多いかもしれませんが、とても刺激的な内容でおもしろい。
陸上100m走、昔と現在でフィニッシュタイムが約0.4秒(距離4m27cmの差)も差があるのに、ランナーの足の関節が動く速さは、昔と今で、ほとんど変わらない。
えっ、そうなの?
このプレゼンでは、スポーツの記録が向上してきた理由として、1.技術革新、2.スポーツの民主化、3.意識革新、この3つの要因を挙げています。
- 技術革新:トラック表面素材の改善、水着素材の改善など
- スポーツの民主化:世界中の人々が参加するようになり、特定競技により特化した身体へと多様化(体系のビッグバン)している
- 意識革新:誰かが成し遂げたことで、いまや当たり前、さらにもっと大胆に
話も興味深いけど、プレゼンのスライドが斬新でとても楽しい。この動画、日本語和訳付きの動画もあるので、ぜひチェックしてみてください。
さて、肝心の本、正直にいうと、ボクにはかなり難解で、相性の悪い本。挿入された事例が多すぎて、ポイントがちょっと掴みにくい。
しかし、本書に触れることで、多角的な面からスポーツを楽しむ視点が得られる。この点では、一読する価値がある本といえるでしょう。
個人的には、12章13章のケニア人マラソンランナーの考察が興味深かい。
カレンジン族はケニア総人口の約12%にすぎないが、同国のトップランナーの4分の3以上を占める。この理由について、資質x環境x努力の要因があるとしている。
- 資質:高緯度と乾燥から体を効率よく冷却できる細い体型
- 環境:移動手段として、幼少期から走る必要がある環境で育つ
- 努力:マラソンの成功者が出たことによるマインドセット
なお、巻末の解説によると、男子マラソン世界歴代100傑は、ケニア・エチオピアの東アフリカの二国の選手で90%以上を占め、西アフリカ系の選手はいない。逆に、男子100m走の100傑に東アフリカ系の選手は存在しないそうだ。とても興味深いです。
あと、7章が「体型のビッグバン」。TEDトークのプレゼンで説明されていることを、より詳細に理解することができる。
冒頭にも書いたように、スポーツ遺伝子について、何が解明されて、何が議論されているのか、そんなことを知ることがでる内容。TEDのプレゼンでもいいし、興味があれば、先端のスポーツ科学の世界に触れてみてください。
しかし、ちょっと前までトレイルの100マイルなんて想像もつかなかったけど、いまやなんだか当たり前(?)。人間の可能性ってすごいですねぇ~
ご意見・ご要望はお気軽にコメント下さい。
では、また。
UTMB2019冒険記の目次
UTMBを目指す市民ランナーの為の記事。レースの様子、シャモニへの行き方、宿泊、必要費用などについて、2019年参戦したことを書いています。興味あれば覗いてみて下さい♪