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【読書】”旅をする木” 序盤で挫折したあなたへ Ⅲ章から読んでみるとハマるかも

旅好きにお薦めの本でよく紹介されている「旅をする木」星野道夫著。アラスカの極北の大自然の中で17年以上も生活していた著者のメッセージあふれた名著なので、ご存じの方も多いと思います。味じのある文章が心に染みる、ボクもお気に入りの一冊です。

実は、購入したものの、最初の数ページを読んだだけで、長い間積読状態でした。そう、序盤で挫折したのはボクです(汗

序盤で挫折

33篇のエッセイで構成された本書。初めて読み始めた当時、著者の世界観に没頭することができなかった。アラスカの知識もなく読み始めると、カリブー、トウヒ、ウミアック、エスキモーの生活などをイメージできず、相性が合わない本と早々にあきらめ、序盤の数篇で読むのを止めてしまった。

そんな「旅をする木」、最近ふと再読してみて、本書の良さをやっと感じています。

後半のⅢ章から拾い読みをしたら、優しい文体にハマった。

その後、星野さんの写真集「悠久の時を旅する」に触れたら、「旅をする木」の世界感に溢れた写真が素敵で、「旅をする木」をまた再読しています。

そんな経験から、もしも同じように序盤で挫折した方は、Ⅲ章の中で気になるエッセイを読んでみるのを、おススメします。

「旅をする木」のⅢ章を推す理由

本書「旅をする木」は三部構成。前半のⅠ章とⅡ章の11編が書き下ろし、後半Ⅲ章の21編とⅡ章の1編が、他の雑誌に掲載されたエッセイを加筆したたもの。

このⅢ章にあるエッセイ、質の高いものが並んでいます。アラスカの知識が少なくても、著者のアラスカ愛が伝わってくる。これがⅢ章をおススメする理由です。

個人的に琴線に触れたエッセイは、「アラスカとの出会い」「16歳のとき」

「アラスカとの出会い」は、著者が大学生の時にみた”アラスカエスキモーの集落の写真”をきっかけに、出合ってみたいと集落村長宛てに手紙を出し、その集落からの返事がきて、現地で3か月過ごす、著者19歳の出来事。

「16歳のとき」は、高校の夏休みに単身でアメリカへ渡った、約二か月の旅の出来事。

ボクが大学生だった頃、海外旅行へ憧れ実行できなかった。この2つのエッセイで、忘れていた、その時のウジウジとしていた気持ちを思い出し、著者の行動力に強く惹かれた。著者の人間性が好きになると、その他のエッセイも次第に心に染みこんできた。

著者の行動力でいえば、冒頭のエッセイ「新しい旅」もいい。アラスカ大学に入学願書を提出した窓口で、英語の点数が若干足りなくて受領できないと言われた直後、大学の学部長に直接交渉を行い入学許可を得る場面も、著者のアラスカへの情熱が伝わるシーンです。

本書の中で、アラスカは約1万年前の時間の感覚を感じる、と著者。欧州に滞在した際のエッセイ「ザルツブルクから」では、欧州の4~5百年前の歴史が、実に最近のこと、時間の流れが浅い、と書かれてあります。欧州の建造物の歴史の古さを感じてきたボクにとって、衝撃的な内容でした。

そんな1万年も長く続くアラスカの世界をいろいろ感じ、アラスカに強い興味を惹かれさせられている。発行から20年以上経っても、メッセージが色あせない一冊です。

書 名 旅をする木

著 者 星野道夫

発 行 1999年

写真集「悠久の時を旅する」のおすすめポイント

「旅をする木」の世界観にハマった方へ、「悠久の時を旅する」星野道夫著もおススメ。アラスカの自然、野生動物、生活する人々を映した、星野道夫さんの写真集。

おすすめポイント

  • エッセイ「アラスカとの出会い」で出てきた手紙。アラスカの村長へ出した手紙と受け取った手紙。その直筆文面の写真が、集落の写真と共に写真集の冒頭にあっる。これだけで感激。 "We are welcome to stay with us." 返事の最後に書かれたこの文章を読んだ時の、著者のいてもたってもいられない嬉しさを思うと、ジーンとくる。
  • 著者が信頼をおく最良のブッシュパイロットのドン・ロスの写真。元アメリカ空軍に所属していただけあって、精悍ないでたちが拝見できる。
  • アラスカで生活する人々の姿。生きた歴史を語る顔、くしゃくしゃの顔から見つめる目は、柔和で、確かだった、と本文で語られています。
  • 巻末にあるアラスカの地図。エッセイの中で出てくる地名、川、山脈、岬などを探すのが楽しい。改めてすごい極地だと感じさせられる。
  • 母親の手記。自宅にいた大学生までのエピソードは、当時の裏事情的なことも知れて楽しい。例えば高校でアメリカ旅行に行った際、最初は中近東に行きたいと言い出しそれは危険だと反対した、とか。

もちろん、カリブー、白熊、四季の景色の数々、トーテムポールなどの写真の数々は、アラスカの魅力を存分に楽しむことができます。

悠久(ゆうきゅう)=果てしなく長く続く

1万年のアラスカの世界観を味わうことができる一冊。

書 名 悠久の時を旅する

著 者 星野道夫

発 行 2012年

 

おまけ:古本屋 オブザーバトリィ

「旅をする木」の中のエッセイ「海流」で登場する、古本屋”オブザーバトリィ”

アラスカ州都のジュノーにある古本屋、店主のおばあちゃんが魅力的に描かれていて、気に入っているエッセイの一つです。

その、古本屋”オブザバトリィ(Observatory)"、ネットで検索したら、実在していました。

添付記事によると、2016年の閉店セールに関する内容。おばあちゃん、当時82歳、の体調不良により、開店1977年から39年間で、店をたたむことにしたそうです。

古本と地図の店、と記事では紹介されており、「旅をする木」の中のエピソードと一致。

記事内の店構えの写真も味があります。

Observatory Books to close after 39 years | Juneau Empire

 

 ご意見・ご要望はお気軽にコメント下さい。

では、また。

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UTMBを目指す市民ランナーの為の記事。レースの様子、シャモニへの行き方、宿泊、必要費用などについて、2019年参戦したことを書いています。興味あれば覗いてみて下さい♪

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